「良いメディア」とは?
メディアは「作り手」と「受け手」のコミュニケーションです。
従って「良いメディア」かどうかを判定するのは、「受け手」であって「作り手」ではありません。これが「作品」を作る「アート」と、「メディア」を作る「クリエイティブ」の違いだということもできます。
「受け手」とのコミュニケーションが成り立たなければメディアは役割を果たさない、ということを、まず理解しましょう。
メディア作りでは『受け手が主役』です。作り手は脇役となって、主役に奉仕しましょう。
メディア作りでは『受け手が先生』です。分からないことがあったり迷った時には、「受け手」に教えてもらいましょう。
しかし実は「作り手」は、作っているとき以外は「受け手」として暮らしています。「受け手の気持ちになることで、より良いメディアを作ることができる」というのが『受け手は自分』の意味です。
「受け手」のことを、広告では「訴求対象」、編集では「読者」、ビジネスでは「お客様」と呼びます。
私たちは、メディアを作っているとき以外は「訴求対象」で「読者」で「お客様」です。プロが作ったメディアを、「主役」の厳しい目で点検し、そして学びましょう。
このように、受け手への伝わりやすさに配慮してメディアを作ることを、「ユニバーサル・メディアデザイン」と言います。
「ユニバーサル・メディアデザイン」でもっとも大切なのは、「主役」である受け手の方々に実際に見ていただき、その意見や要望を取り入れようとする姿勢です。このサイト自体も「ユニバーサル・メディアデザイン」の考え方と技術に基づいて作られていますが、その具体的な方法については、他の項目であらためて説明します。
メディアの「見方」
良いメディアを作るためには、メディアの「見巧者(みごうしゃ)」になる必要があります。「作り方」の前に、メディアの「見方」を学びましょう。
ウェブサイトや印刷物などのメディアに触れた時、あなたは「これはいい!」と思ったり「パッとしないな」と思ったりするはずです。「良いメディア」を作るためには、その違いに敏感になる必要があります。
メディアを見るポイントは3つです。
《メディアを構成する3要素》
文字原稿(言葉)×画像原稿(写真やイラスト)×レイアウト
私たちは優れた映画を見たとき、ただただ「素晴らしい!」と感心し、夢中になります。しかし自分も優れた映画を作るためには、それを分析的に見なければなりません。脚本、出演者の演技、カメラワーク、音楽などに分けてもう一度見直し、そこから学ぶ必要があるのです。
メディアも同じです。プロが作ったウェブサイトや印刷物で「これはいい!」と思ったものを、文字原稿と画像原稿とレイアウトに分けて見てみましょう。
あなたが特に良いと思ったのは、言葉(文字原稿)でしょうか、写真やイラスト(画像原稿)でしょうか、レイアウトでしょうか。なお、レイアウトは本来「配置」という意味ですが、ここでは線や図形による装飾や、配色も含むことにします。
優れたウェブサイトや印刷物は、文字原稿・画像原稿・レイアウトの3つ全てが良く、そうでないメディアはどれか、あるいは全てがダメなのです。上の式でこの3つを掛け算にしたのは、どれかが0点だと、全体が0点になってしまうことを表しています。
「メディアの専門家でもない自分に、そんな判断ができるだろうか」と思う方もいるかもしれません。しかし大丈夫です。メディアは「受け手が主役」だからです。
まずは自分が作ろうとしているものに近いメディアを探し、よく見てみましょう。そしてメディアを作ったら、今度は「主役」の厳しい目で、自分が作ったメディアを点検しましょう。
費用対効果を考える
メディアの制作では、費用対効果が重要です。そして「費用」にはお金だけでなく、作り手であるあなたの時間と労力も含まれます。限られた予算をうまく使って、最大の費用対効果を目指しましょう。
たとえば新たなお店を始めたり、新しく団体を立ち上げて活動を始める場合、最初に作るべきメディアは何が良いでしょうか。
もちろんケースバイケースですが、もしも迷ったら、まずウェブサイトを作りましょう。そしてその後、印刷物やSNS、ネット動画を組み合わせて、相乗効果を狙うことをお勧めします。
インターネット環境さえあれば、ウェブサイトは24時間、どこからでも見られます。連絡先や料金などの重要な情報を、必要としている人に確実に届けることができます。また、更新することで常に最新の情報にしておくことができます。
ウェブサイトに何を載せるべきか。更新は誰がするのか。最新情報をお知らせするのはブログか、Facebookページか、ツイッターなどのSNSか。こうしたことを「受け手」を意識しながら検討することで、私たちはメディアを良いものにして行くことができます。
先ほどご紹介した3つの要素〈文字原稿・画像原稿・レイアウト〉はもちろん大切です。
しかし実際にメディアを作る際には、その前に「メディア全体の企画」という作業が必要です。ここをないがしろにして思いつきで作ってしまうと、「受け手」にうまく届けることができず、公開後に大きな修正が必要になりかねません。
メディアの企画には、広告や編集の技術を用いましょう。プロがメディアを作る際も、企画に十分な時間と手間をかけ、広告や編集の技術を総動員して作業を進めます。そしてこのサイトでは、企画、広告、編集についても学ぶことができます。
もちろんプロにすべてを委ねることもできますが、たとえ十分な予算があっても、業者に丸投げすることはお勧めできません。このサイトでメディア作りの基本を学べば、発注や指示・修正依頼の際の費用対効果を、最大限に高めることができるはずですよ。
○迷ったら、まずウェブサイトから。
○その後で印刷物、SNS、ネット動画などを組み合わせる。
○企画に手間をかけると「費用対効果」を高められる。